DATE 2008.11. 7 NO .



 窓の向こうは、まるで違う世界のようだ。
 祝祭に華やぐ人、人、人……
 サウスフィガロ程ではないにせよ、城の周りはさながらひとつの街の様相を呈している。

 先王が「病死」したのは悲しい事実。
 けれど若い王子が跡を継ぐ。
 ならばそれを、祝うだけ。

(……そうでもしないとやっていられないのだろうな。侵略を続ける帝国との同盟に、街のど真ん中で暴動を起こすリターナー……一般人にはどうしようもない不安材料ばかりだ。なのに頼りの王家は昨年――)

 城内はただ粛々と準備に励むばかり。

 あの日の光景は、まだ鮮やかに蘇る。
 一年経った今も十年経った未来でも、きっと。

 それでも、国民には忘れさせなければならない。
 あの日の事も、先王は毒殺されたなどという噂も。

 何があってもこの国への想いは、変わらない。
 国を、民を、守ってみせる。



 俺は……私は、今日、戴冠式に臨みます。

 見てくれていますか――





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